机上の王、現場に出る。『シン・仮面ライダー』
『シン・仮面ライダー』鑑賞。
『シン・仮面ライダー』では「ショッカー」という存在と、 彼らを止める人物のモチベーションが展開の軸になっている。
「悪の組織を運営する」 といったシミュレーションゲームなどでも構成員を離さないためには良い給料や、 良い労働条件を用意しなければいけない。強い怪人で人々を支配するというのは、 ムズかしいし現実的では無い。 という問題への回答があるのがなかなか面白い。
また、 オリジナルの造形を尊重しつつディテールやバランスで調整された ライダーや怪人たちはカッコよく、 特にロングコートをたなびかせるライダーは至極絵になる。
俳優陣も芸達者が揃っており、庵野特有のアニメっぽい抑揚が必須 になる非現実的なセリフや、過剰な感情表現が必要になる演技を、 バランス良く演じ分けている。オリジナルの藤岡弘、 もあの年代の人にすれば180cmの高い身長で筋骨隆々な肉体を 持っているが、やはり最近の、 手足の長い若者のプロポーションの良さはより見栄えがするものだ 。
しかし、アクションがまるでダメだ。
その様子がシュレッダーにかけたような細かいカット割りで、 誰がどう殺されたのか判らない。その映像も被写体にカメラが近く、 チラチラと何かがスクリーン前を忙しなく通過していく。 何が起こったのか判らないまま、戦闘員たちがバタバタと死んでいくのだ。
設定としてショッカーたちが死ぬと証拠隠滅のため泡になって消える。ライダーが血塗れだった手を見つめ自らの暴力に震える場面だが、泡でしっとりとした 黒い革手袋をいくら見つめても、 単に革手袋なだけで何の印象も無い。
中盤、 廃トンネルの中でライダーが黒いスーツのショッカーたちに襲われ る場面では、真っ暗な中、バイクの ヘッドライトとライダーの目だけが浮かび上がり、本当に全く 何がなんだか判らないまま爆発が起こって終わってしまう。
私が鑑賞した劇場では上映前に韓国アクション映画『THE WITCH/魔女 -増殖-』
政府の実験により超能力を得た少女が施設を逃げ出し追手と戦うと いう、ほぼ仮面ライダーと同じ設定を持つ『THE WITCH/魔女 -増殖-』予告では、ビルの壁面を落ちながら弾丸をかわし、 走る列車の上を駆け回り、超人的な跳躍を見せる。
『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』の予告では超クロスレンジの銃撃戦からの格闘戦や、 手数の多い超人的な高速ファイトをコメディ的空気の中に投入する 、前作の良さが継承されていた。