「これは映画である」と強く思わせる『ブレット・トレイン』

TOKYO発の新幹線に乗り合わせた殺し屋たちが、伝説のヤクザ「白い死神」の息子と彼の身代金が入ったブリーフケースを巡り死闘を繰り広げる。 タイトルのブレット・トレイン「弾丸列車」とは特急列車のことだが、狭義で日本の新幹線のことを特に指す。 さて。…

『女神の継承』がよく解る解説

※オチまで含めた話を書いているので、鑑賞済みの人向け。解説的なやつです。 そもそも、プロデュースを勤めたナ・ホンジン監督は自身の『哭声/コクソン』の続編として本作を着想したそうだ。となれば、本作の軸にあるのは「神の沈黙」を含んだ「信心」とい…

正義の暴力 〜『ダウト〜あるカトリック学校で〜』シスター・アロイシスの暴走〜

映画『ダウト〜あるカトリック学校で〜』。 カトリック学校の校長シスター・アロイシスは校則を破った生徒には容赦無い罰を与えるほど厳格な信仰者であり、温和で進歩的な考えの教会の司祭フリン神父のことはもちろん疎ましく思っている。 そんな中、フリン…

成就しない愛 〜『セーラー服と機関銃』政の幸せ〜

いきがかり上、組員が4人しかいない弱小ヤクザの組長に収まった女子高生の星泉。しかし就任早々ドラッグをめぐるトラブルに巻き込まれ、組員2人が殺されてしまう。復讐の殴り込みに向かう相手事務所のエレベーターの中。おしっこしたいと言う政に帰ってもイ…

キングになったジョーカー 〜『ジョーカー』マレー・フランクリンの人生〜

映画『ジョーカー』。 ピエロのバイトで食い繋ぐ、売れないコメディアンのアーサー。人気コメディアンであるマレー・フランクリンの番組で、ダダ滑りする舞台での様子がビデオ放映されバカにされる。その上、さらにバカにし倒すため番組に呼ばれる。しかし「…

正義と快感 〜『セブン』ジョン・ドーの目的〜

映画『セブン』。 警察に出頭したジョン・ドーは、それまでの犯行を認めることと、まだ発見されていない犯行の自白を引き換えに、ミルズ刑事とサマセット刑事を伴い、何も無い荒野の真ん中へ向かう。その道々、ジョン・ドーは饒舌に犯行の意図を語っていく。…

階段のエスプリ 〜クリス・ロックとウィル・スミス〜

フランスの「エスプリ文化」。上手い言い回しや比喩表現で面と向かって嫌味を言う。という、いけすかない文化である。 言われた方もその場でエスプリを返せれば良いのだが、咄嗟に気の利いた言葉を思いつき絶妙なタイミングで放つのは至難の技だろう。 あぁ…

「よくわからない」という明確さ『MEMORIA メモリア』

パブロ・ピカソによる反戦をテーマにした「ゲルニカ」を何の前情報も無く鑑賞したら、多くの人はそのテーマ性には気づかないであろう。 とはいえ。圧倒的な存在感(デカイ!)と、特異な筆致の魅力は強く、何某かの強い印象を観る者に持たせるだろう。 「な…

パーソナルな物語『マトリックス レザレクションズ』

※以下、大オチについての話を書いています。未見の人はまずは鑑賞するのをオススメ。大きく毀誉褒貶がありはするものの観たところで死ぬワケじゃなし。2時間半あるので尻が痛くなる可能性はあるが、最近の映画館の椅子はよく出来ているよ。 ニック・ジョナス…

『シャン・チー テン・リングスの伝説』

『シャン・チー テン・リングスの伝説』鑑賞 ※映画のラストについてネタバレ書いています。まだシャン・チー観てないなら、まず劇場へ行ってください。面白いです。 MCUの新キャラ映画。 本作で目を惹くのは雄弁な「カンフー言語」だ。 映画序盤。秘密の村タ…

「サンシティ」と日本

1984年。イギリスのポップ/ロックミュージシャンたちにより、興されたチャリティ・プロジェクト「バンド・エイド」に端を発し、翌年にはアメリカの「USAフォー・アフリカ」が立ち上げられ、豪華ミュージシャンたちによるチャリティ祭りが、ある種「ブーム」…

もう少しまじめにやっておくべきだった

東京オリンピック・パラリンピックと言えば、オシャレあごヒゲ佐野研二郎である。 2020東京オリンピック・パラリンピック公式エンブレムのデザイナーとして脚光を浴びたが、その光は優しいものでは無かった。まず、そもそものオリ・パラエンブレムがベルギー…

ヘイ・ボーイ、ヘイ・ガール『ハンナ』

ケミカル・ブラザーズ1st『さらばダスト惑星』を初めて聞いた時、荒っぽいロックビートにガツガツと裏打ちが入るリズムと、生音やサイレン音をサンプリングしたザリザリとした触感が猥雑な世界をイメージさせ、心底ヤラれてしまった。 その彼らが音楽を担当…

幸せに、まだ慣れない

一昨年の冬からネコを家に迎え入れた。 お腹に白い差し色がある黒猫。女の子なので逞しく育って欲しいという願いも込めて『ブラック・パンサー』の屈強な戦士「オコエ」の名前をいただいた。 しかし、オコエはネコタワーの2階(40cmほどの高さ)から飛び降…

人がスターウォーズを愛することのどうしようもなさ『スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け』

『スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け』を観た。 私は映画好きで、最近は忙しくてそれほど本数は観れていないが、それでも月に6〜7本は劇場で映画を観るし、好きが高じて映画ライターのようなこともしている。スター・ウォーズについてはギャラの…

海兵隊員は人を殺すために自分の良心を壊す

20年ほど前。今はもう無い吉祥寺のカレー屋で、突き出しとして出てくるキャベツの漬物が苦手だった。マズいワケでは無い。味としては漬物なのだが、たとえば「フルーツの匂いのする消しゴム」のような。確かにフルーツめいた甘い匂いはするが、食べたいとは…

ドリフト的横滑り映画『ZERO』

『ZERO』鑑賞。 「キング・オブ・ボリウッド」シャー・ルク・カーン最新作。本国でも12月21日に公開されたばかりで、日本では日本在住インド人向けの上映会を開催しているスペース・ボックスさんによる、英語字幕の上映。 ちなみに、スペース・ボックスさん…

映画的素養についての話

古澤健監督作『青夏 きみに恋した30日』は高校生の一夏の恋愛模様を描いた作品だ。 40代のおっさんは間違いなくマーケティングのメインターゲットの外側に追い出されているのだが、それでも楽しく観れるのはひとえに監督の映画的な素養であろう。 自然に溢れ…

ロックTシャツとズーランダーとアホ

「音楽を知らなくたって着ていいじゃん、ロックT」少し前の話。メタリカのアルバム「キル・エム・オール」(全員ぶっ殺す!)ジャケットをプリントしたTシャツ着用のイケメンモデルに、そんな見出しが躍るファッション誌へ、様々な声が挙がった。おおむね「…

ガンでした

以前「益体の無い話」として痩せた話を書いたが、何のことはない。ガンだった。 発生した場所は大腸のS字結腸という、尻の穴手前最後のカーブあたり。そこにコブシ大の腫瘍が出来ていて、あと少しで通り道を塞いで腸閉塞を起こしかけていた。これが食欲を無…

小野寺系は今日も意味が無い 〜『沈黙 -サイレンス-』篇〜

http://realsound.jp/movie/2017/01/post-3876_2.html マーティン・スコセッシ監督の『沈黙 -サイレンス-』。 私自身はキリスト教についての知識は通り一遍(かどうかも怪しい)程度しか無いが、少なくともこの映画が「神の沈黙」をテーマにしていることは理…

小野寺系は今日も意味が無い 〜『カンフー・ヨガ』篇〜

http://realsound.jp/movie/2017/12/post-143909.html 長年の危険な撮影における蓄積した負傷や肉体の酷使によって、ジャッキーは満身創痍の状態にあるという。慢性的な身体の痛み、加齢。限界を悟ったジャッキーは、ロバート・デ・ニーロのような演技派への…

小野寺系は今日も意味が無い 〜『バーフバリ 王の凱旋』篇〜

http://realsound.jp/movie/2018/01/post-145508.html 音楽や舞踊に始まるインドの芸能文化には9つの感情表現があり、映画でもそれらの表現を文法的に利用し、様々なスパイスをブレンドするかのように鮮烈かつ複雑な、いわゆる「マサラムービー」をかたちづ…

残念な人々

おそらく私はこのコメント主よりも多くスターウォーズを観ているが、スターウォーズ世界の宇宙船内が無重力だった描写は寡聞にして記憶にない。カイロ・レンとルークの対決場面、幻影だと知ったレンにルークはこう言う「See You Round,Kid!」(じゃ、また。…

「小野寺系の『最後のジェダイ』評:ディズニー帝国の『スター・ウォーズ』に新たな希望は生まれるか?」はいかに駄文か。

この世の中にとって全く価値の無いもの。あるとすれば、その筆頭に挙げられるのが小野寺系の映画評だろう。『セブン』がハッピーエンドだと評した文はその好例だ。あてずっぽう。あてこすり。無意味。で、無価値。 その小野寺がスター・ウォーズ(以下SW)の…

『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』を罵る人々

私自身の話になってしまうが。とはいえ、ことさらこの場所では私自身の話以外書いたことは無い。と、改めて記しておこう。 まず。今回の『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』私のファースト・インプレッションは「面白かった」である。 どのレベルで「面白か…

益体の無い話

痩せた。 世の多くの女性や、腹の出た中年男性あたりは羨ましいところなのかもしれないが、きっかけは惨めなものだ。 風邪をひいて内臓を悪くして食欲が落ち、あまり食べない生活を続けていたら、あまり食べなくても腹がいっぱいになる体質に変わった。加え…

悪いことしましョ!

職場が新宿で、事務所への往復にビックロとティファニーの代理店が入ったビルの隙間を抜ける。その場所で、最近になって、ちょくちょく気味の悪い情景を見かける。 土地勘の無い人に少しだけ説明すると、くだんの道は、一応車道でもあるんだけど、ほぼ歩道と…

『HiGH & LOW THE MOVIE』をめぐる言説について。

評論家の仕事は総じて楽だ。リスクも少なく立場は常に有利だ。 作家と作品を批評するだけだし、辛口の批評ならばそれは我々にも読者にも愉快なものだ。だが評論家は知るべきだ。“平凡だ”と書く評論よりも、平凡な作品の方が意味深い事を。だが、我々もリスク…

語りえぬものについては、沈黙しなければならない

ぼんやりと思いついたこと。 『クリーピー 偽りの隣人』がワケ解らない! っという感想を見かけた。 確かに、解りやすい作りでは無いように思える。 動機が無い連続殺人鬼がいて、いわゆる“普通”の社会通念とは違った倫理観を持ちながら、それが“違っている”…