読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Joe Talk

f:id:samurai_kung_fu:20150212145658j:plain

世に蔓延る常套句について。
新作『スター・ウォーズ フォースの覚醒』の公開が迫り、ティーザー予告も公開され、制作についての裏話も少しづつメディアに報じられだした。中でも「クリエイティブ・コンサルタント」のジョージ・ルーカスのストーリー案がJ・J・エイブラムスに却下されたニュースは多くの賛同をもって迎えられている。
 
監督業からはほぼ引退していたルーカスが再びメガホンを取ったSWプリクウェルシリーズ三部作は多くのSWファンさえも落胆させたし、インディ・ジョーンズもルーカスの選んだ脚本で作られた最新作は酷いものだった。それらのことが今回の「ルーカス案却下」賛同の要因であろう。
 
しかし、ルーカスの残したSWオリジナル三部作や『THX1138』『アメリカン・グラフィティは単にヒット作というだけでなく、映画史に残るエポック・メイキングな作品だ。
対してJ・J・エイブラムスのフィルモグラフィといえば、トム・クルーズの『ミッション:インポッシブルやSWに双肩する人気を誇る『スタートレック』のリブートなど、最初から立派な看板ありきのスタジオ主導のシリーズだ。唯一のオリジナル作『スーパー8』もエンドクレジットのオマケ8ミリ映画ほどは本編に興奮できなかった。どれをとってもルーカスの残した傑作を越える映画など1本も無い
 
J・J・エイブラムスは、複雑で大きなプロジェクトの現場をそつなく回せる「優れた進行管理係」として重宝されているだけだろう。誰も思いつかなかった表現を編み出すとか、今まで映画では描かれたことの無い情景を見せてやろうという心意気は無く、期間内にあらかじめ想定した様式で仕事を終わらせるだけ。そんな「最近ヒット作に関わってイキっている進行管理係」風情がルーカスの案を却下したことに、賛同の声が出ること自体、(たとえ近年の業績が振るわなかったとしても)理解に苦しむ。
 
また、プリクウェル三部作でことあるごとに取り沙汰されるジャージャービンクス/グンガン族だが、ルーカスが彼らに込めたオマージュの一つも知らない輩がピーピーと下した腹のようなことをぬかすのも腹立たしい。
別にプリクウェル3作が傑作だとは言っていない。ジャージャーはあれはあれで見慣れてくれば可愛い奴だが嫌われているのも解る。ただ、評判の悪いプリクウェルシリーズやジャージャーなら無条件で貶して良い! と記号的にその名前を出し、何か気の効いたジョークでも飛ばしたとばかりに鼻の穴おっぴろげているブレイン・レスな輩にはあきれ果てる他ない。
 
 
インド映画に対する「3時間以上あって長い」だの「唐突に始まるミュージカルがバカバカしい」だのという常套句も同じだ。
実際にはインド映画には「3時間以上ある作品」と、「そこまで長くない作品」が当たり前のようにあり、その割合は圧倒的に「3時間以下」の方が多い。近年では2時間弱が主流になっている。
加えて、「インド映画といえば」といった話題で必ず取りあげられる古典的名作、サタジット・レイのオプー三部作からして『大地のうた』(2時間5分)、『大河のうた』(1時間42分)、『大樹のうた』(1時間38分)と、どれも3時間以下どころか、2本については2時間を切ってさえいる。
たとえば黒澤明の映画を考えてみればいい。「世界の黒澤」と言われるほどの巨匠で、日本を代表する映画監督と言ってさしつかえ無いだろう。その黒澤の『七人の侍』(3時間27分)、『赤ひげ』(3時間5分)、『影武者』(2時間59分)を取り上げて「日本映画は長い!」と言う奴がいたとすれば真のマヌケだ。
 
「唐突に始まるミュージカル」となると、もはや意味すらわからない。はたして「徐々に始まるミュージカル」があるのだろうか? 一人づつ少しづつ唄い始めるミュージカルはあるかもしれないが、唄い出した時点で「唐突」だろう。もしくは歌い出す直前に「さぁ!これからミュージカル・ナンバーを披露します!」とアナウンスするミュージカル映画は興ざめもいいところだ。広い世の中、そんなミュージカル映画もあるのかもしれない。しかし、それがいつからメインストリームになったのか、私は寡黙にして知らない。
 
 
常套句はたいがい、門外漢がよく知らない世界のことを語っているだけだ。よく知らないから他の言葉で言い表せず、繰り返して同じ言葉が人々の口を転々と伝っていく。だから「常套句」なのだろう。
 
映画を趣味以上の範囲で見ている人の多くはJ・J・エイブラムスがルーカスを越える名監督だなんて、少なくとも今のところは思っていないだろう。インド映画をよく見ている人は「インド映画は3時間以上あって、唐突に始まるミュージカルがバカバカしい」と言ってる人が、1本もインド映画を見ていないだろうし、ミュージカル映画さえ大して見ていないと知っている。
 
「人」という字は、右側の「人」が左側の「人」を支えているから「人」たりえる。決して互いに支え合っているワケではない事は、見れば解る。世の中で流通する常套句は、だいたいそんな程度なんじゃないだろうか?
 
少なくとも、常套句は疑ってかかるべきであろう。