映画『ジョーカー』。
ピエロのバイトで食い繋ぐ、売れないコメディアンのアーサー。 人気コメディアンであるマレー・フランクリンの番組で、 ダダ滑りする舞台での様子がビデオ放映されバカにされる。 その上、さらにバカにし倒すため番組に呼ばれる。しかし「 ジョーカー」 となったアーサーは生放送中に社会の不条理をまくしたて、 その象徴としてマレーを射殺する。
『キング・オブ・コメディ』 は誇大妄想狂の売れないコメディアンのルパートが人気コメディア ンを誘拐してテレビ番組に出演を果たす、という『ジョーカー』 を強く思わせる作品だ。
つまり『ジョーカー』のマレーには『キング・オブ・コメディ』 での「売れない過去」も含ませている。では「キング」 となったルパート:マレーはいかに「キング」 であり続けたのだろうか?
そもそも。宮廷道化師(クラウン/ピエロ/つまりはジョーカー) は、貴族や王族(キング)に仕え、 時に批判も辞さずに彼らを楽しませる、という役割を持っていた。 なので自分を雇うパトロンと、 せいぜいパトロンの家族を楽しませれば良かった。 しかし現在の道化師: コメディアンは多くの大衆を相手にしなければならない。
ただ、幸い現在のパトロンである「多くの大衆」 はコメディアンを「雇っている」という意識は無く、 逆に有名人として偶像視している。また「多くの大衆」 の嗜好や趣味は多種多様だが総じて陽動されやすい。そこで、 偶像性を駆使し多くの大衆の旗手として先頭に立ち、 ブッ叩いていい奴を名指しして回り「キング」であり続けた。
偶像視されたマレーは自分の弱さを忘れ、やがて批判する者がいない「 キング」となり、弱者を晒しあげ続けた。
最近、そんな人の活躍を見かける。